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2024.07.05 UP

AI時代だからこそ重要性が高まる「取材術」のポイント【第3回】





※第1回目のコラムはこちらからご覧ください。
※第2回目のコラムはこちらからご覧ください。

●コラムの内容
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「取材術」のPoint5:取材は臨機応変に、聞くべきことを逃さない

ここからは、実際の「取材」場面を想定してみます。まず、取材の前に、どのような質問をするのか、いくつかの「シナリオ」を準備します。BtoBの対企業の取材では、アンケートの「調査票」に回答してもらうような方法はとれません。あくまで、こちらの関心事について「キャッチボール」をしながら進めていくスタイルになります。

面談取材において最も重要なことは、自分が何を聞きたいのかを明確にしておくことです。そのうえで「聞きやすい」質問からはじめて、具体的な質問へと進めていきます。漠然とした質問では、漠然とした回答しか得られません。事前に「なに」を「どのように」聞いていくか、頭の中に複数のシナリオを用意しておくことが大切です。

また、取材で会う人はたいてい初対面の人です。初対面の人との取材では、いかに相手と友好的な人間関係を作れるかを意識して取材に臨みます。相手に気に入られようと、お世辞を言ったりへりくだってこびへつらう必要はありません。しかし、取材を受ける側も見ず知らずの初対面の人から根掘り葉掘り聞かれると思うと、否が応でも緊張するでしょう。

そこで、初対面の挨拶は、顔を合わせた瞬間から笑顔で接し、取材先に喜んでもらえるような「雑談ネタ」を用意するなど、少しでも親近感を持ってもらえるような話題を心がけるのが「取材術」のコツです。実際の取材において相手の気持ちを掴むには、事前にどれだけ勉強したかにかかっています。「こいつわかってるな・・・」と思わせてこそ、相手の気持ちを掴めるものです。

取材の現場では、決して「知ったかぶり」をしてはいけません。特に専門用語・業界用語は意味を確認しながら取材を進めていきます。十分理解ができない回答については、「どういう意味ですか?」と単刀直入に聞いて理解するようにします。
業界によっては、一種のスラングともいうべき独特の言葉使いがありますが、自分勝手な思い込みで誤った解釈をしないよう注意が必要です。

取材の主導権は、あくまでも取材する側にあり、どういう答えや発言を引き出せるかは、取材する「こちら側」の質問の内容や仕方にかかっています。相手方が質問されていないことを自ら進んで話すようなことはほとんどありません。本当に聞きたいこと、知りたいことを相手から引き出すためには、しっかり準備した「質問」が必要であり、そこにもっとも知恵を使うべきです。「質問」と「回答」のキャッチボールを繰り返す中で、聞くべき内容について相手がどんどん話し始めてくれたら成功と言えるでしょう。質問の順番を変えたり、掘り下げたい部分を絞り込んで濃淡をつけることも「取材術」のポイントです。ただし、決して「誘導尋問」にならないよう注意しなければいけません。

慣れないと少し勇気が要りますが、質問した後は「沈黙」を恐れず、ゆっくり答えを待つ姿勢も重要です。いい答えが返ってきたときは率直に頷くなど、取材相手が話しやすくなるような雰囲気をつくるのも「取材術」です。

最後に、取材現場ではある程度の「粘り」が必要です。「粘り」は、ひとえに「聞くべきこと」への執着心にかかっています。雑談なども交えながら時間ぎりぎりまで粘ることが成功のために必要となります。
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「取材術」のPoint6:取材結果を鵜呑みにしない、クロスチェックが大切

苦労して行った「取材」ですが、その取材内容を鵜呑みにしてはいけません。
取材する側は、取材相手が正確に回答する義務も必要もないことを常に意識しておくべきです。
取材内容の精度を確認するためには、第三者へのクロスチェックのための取材を行ったり、結果に矛盾が生じた場合には取材先へ再確認するなど、精度を高めていくことが必要です。
また、マクロ経済データとの関係、業界のトレンドを示す統計データ、関連記事や与信レポート、IR資料などの公開情報とも突き合わせて確認し、矛盾がないかどうか、差異があったとしても腹落ちできる合理的な解釈が可能かどうか検証し、得られた情報の精度を高めることも必要です。

そして、一連の取材結果をもとに「報告書」の作成に取り掛かります。
それまでバラバラだった「点」の情報や既存情報ではわからなかった部分を、取材で得た情報をもとに、一つのストーリーにまとめていきます。市場調査における「報告書」は、新しい切り口や独自の結論を導き出すのではなく、検証された取材結果に基づく、妥当性のある事実が求められます。
また、報告書では、取材によって明らかになった「事実」と、取材をもとに推論(推計)した内容を区別できるように記載することも重要です。臨場感のある直接の取材コメントをカギカッコ付きにすることで、臨場感も生まれるでしょう。
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「取材術」のPoint7:取材感覚の磨き方と調査結果の活かし方

「取材術」を身につけるための日常的な「取材感覚」の磨き方について考えてみましょう。「取材感覚」を身につけるための第一歩は、何事にも旺盛な好奇心をもつことです。自分自身の関心事として調査に取り組むことによって、「取材感覚」が磨かれていきます。
本コラムの初回でも触れた内田和成氏は、常に自分自身の関心テーマについて頭の中に情報BOXが20個ほどあるそうです。日頃の生活の中でも関心テーマのアンテナを張っておくと、「情報」が向こうから飛び込んでくるようになる、ということが言えそうです。

また、面談取材は、人とのコミュニケーションです。上手な取材を行うためには、豊富な知識や専門性も必要ですが、取材相手とのコミュニケーション力、間合いをはかる能力、親しみやすさ、人間的な安心感、臨機応変さや柔軟性など「人間力」を高めることが案外重要になります。

そして、調査結果をどのように活用するかについて、考えてみましょう。「調査」で集まった情報から「わかったこと」「わからなかったこと」を客観的に俯瞰することがポイントです。そして調査結果そのものにこだわるのではなく、調査結果はあくまでも「成功のためのヒント」、課題解決を見出すための「一つの情報」「切り口」としてとらえることで、調査結果の活用の幅が広がります。




最後に

さて、このコラムシリーズでは、AI時代だからこそ重要性が高まる「取材術」のポイントを紹介してきました。

しかし、これらはあくまでも教科書的な整理であり、このコラムでは触れていない細かなノウハウも数多く存在しています。

皆様は日頃の業務に追われ、その片手間に取材調査を行うのは難しい場面もあるかと思います。また、新規分野・業界にアプローチするルートがなかったり、業界の専門知識が不足している場合もあるのではないでしょうか。状況によっては、直接的に外部にコンタクトを取ることが得策でないこともあるでしょう。

そのような際は、弊社のような外部ネットワークの調査機関がお役に立てるかもしれません。ぜひお気軽にご相談ください。




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