本シリーズでは、既存の商品や技術を従来の顧客から新たな顧客や業界に展開することによる新市場探索、新事業開発の進め方を説明しています。
前回第1回では「探索市場の設定①」として、現在の商品や技術が顧客にとってどのようなメリットや価値を与えることができているかを抽出することを探索の起点とすること、次に抽出できた商品特性なども踏まえながら、何に置き換えることができるかの対象、代替ターゲットを定め、その用途市場を幅広く探索することをご説明しました。
第2回では「探索市場の設定②」として、代替ターゲットとは異なるアプローチとなる成長市場探索の方法、これらを総括して新用途、新市場を発想するための技法についてご説明します。
図表 日本能率協会が考える代表的な技術・製品の新用途・新市場探索の進め方(ビジネスプランニングまでの連載予定)
前回第1回では「探索市場の設定①」として、現在の商品や技術が顧客にとってどのようなメリットや価値を与えることができているかを抽出することを探索の起点とすること、次に抽出できた商品特性なども踏まえながら、何に置き換えることができるかの対象、代替ターゲットを定め、その用途市場を幅広く探索することをご説明しました。
第2回では「探索市場の設定②」として、代替ターゲットとは異なるアプローチとなる成長市場探索の方法、これらを総括して新用途、新市場を発想するための技法についてご説明します。
図表 日本能率協会が考える代表的な技術・製品の新用途・新市場探索の進め方(ビジネスプランニングまでの連載予定)
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1.成長市場の先取り対応
「探索市場の設定①」で取り上げた代替ターゲットは、すでに存在する市場でビジネスチャンスを探るアプローチです。市場規模が明確で、顧客や競合企業も特定しやすいです。一方で、先行企業が事業展開をしている状況の中で、自社の商品にスイッチしてもらうためには、コストや時間が必要となることが想定されます。
今回取り上げる、成長市場の先取りというアプローチは、今はまだ形成されていないが今後形成されるであろう市場を見つけ、そこで事業を行おうとするものです。製品・サービスは市場におけるライフサイクルがあります。それらは一般的に、導入期→成長期→成熟期→衰退期という推移を経ます。
その導入期において、成長、成熟を見越して先取り対応するというアプローチです。
このアプローチの場合、導入期という市場としては未成熟な状態を対象とするため、既存情報から定量的に市場を把握したり、業種、業界を絞ればおのずと競合企業を抽出できる、といった探索が困難になります。
そうした際のビジネスチャンスの手掛かりは顧客の要望になります。しかも現状の顧客の要望だけでなく、将来の顧客の要望、言い換えれば将来ニーズがポイントとなります。現在は既存製品のスペックで満足しているが、将来的には現在と異なるどのようなスペックが必要とされるか、を探索することになります。
顧客は現在使用、導入している製品・サービスの問題点や不満は言及できますが、将来の問題点や課題をはっきり認識していることは稀です。そのため、顧客が思っていることや意見を基礎として、将来求められるニーズは何か、将来のニーズに対して強みを活かす可能性、置き換えのタイミングを計る、などを自らで探索、想定し、将来ニーズを見極めることが重要になります。
図表 市場におけるライフサイクルと先取り対応
「探索市場の設定①」で取り上げた代替ターゲットは、すでに存在する市場でビジネスチャンスを探るアプローチです。市場規模が明確で、顧客や競合企業も特定しやすいです。一方で、先行企業が事業展開をしている状況の中で、自社の商品にスイッチしてもらうためには、コストや時間が必要となることが想定されます。
今回取り上げる、成長市場の先取りというアプローチは、今はまだ形成されていないが今後形成されるであろう市場を見つけ、そこで事業を行おうとするものです。製品・サービスは市場におけるライフサイクルがあります。それらは一般的に、導入期→成長期→成熟期→衰退期という推移を経ます。
その導入期において、成長、成熟を見越して先取り対応するというアプローチです。
このアプローチの場合、導入期という市場としては未成熟な状態を対象とするため、既存情報から定量的に市場を把握したり、業種、業界を絞ればおのずと競合企業を抽出できる、といった探索が困難になります。
そうした際のビジネスチャンスの手掛かりは顧客の要望になります。しかも現状の顧客の要望だけでなく、将来の顧客の要望、言い換えれば将来ニーズがポイントとなります。現在は既存製品のスペックで満足しているが、将来的には現在と異なるどのようなスペックが必要とされるか、を探索することになります。
顧客は現在使用、導入している製品・サービスの問題点や不満は言及できますが、将来の問題点や課題をはっきり認識していることは稀です。そのため、顧客が思っていることや意見を基礎として、将来求められるニーズは何か、将来のニーズに対して強みを活かす可能性、置き換えのタイミングを計る、などを自らで探索、想定し、将来ニーズを見極めることが重要になります。
図表 市場におけるライフサイクルと先取り対応
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2.SN変換による新用途・新市場アイデア発想
SN変換(Seeds/Needs 変換)とは、新用途市場のアイデアの発想を円滑にするために、商品の持っている技術的な特性(Seeds)を、顧客にどのような利点(価値)を与えるかという顧客側の言葉(Needs)に変換し、新たな使い方を抽出する発想技法です。
図表 SN変換による新用途・新市場アイデア発想例(部品メーカー)
SN変換(Seeds/Needs 変換)とは、新用途市場のアイデアの発想を円滑にするために、商品の持っている技術的な特性(Seeds)を、顧客にどのような利点(価値)を与えるかという顧客側の言葉(Needs)に変換し、新たな使い方を抽出する発想技法です。
図表 SN変換による新用途・新市場アイデア発想例(部品メーカー)
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まず、SN変換表の左側(Seeds側)を作成します。技術、ノウハウ、設備資産といった自社の強み技術特性が顧客にとってどのような価値・機能として発揮されているか、という表現に変換します。図表にある、Seeds(製品特性)の項に記載した「微細加工」を例にとると、微細加工そのものは顧客にとっての価値・機能ではありません。微細加工という特性が高精度計測を可能にしていることが分かって初めて微細加工は高精度計測というNeeds(価値)を実現している、と捉えることができます。
1つの Seeds で1つの Needs を実現しているケースもあれば、複数の Seeds で1つの Needs を実現しているケースもあります。SN変換表の左側で、どのSeedsがどのNeedsを実現しているかをマトリクス化し、該当するセルに印を付けていきます。表中央のNeeds については表現の大小はこだわらず、なるべく多くの該当事項を列記することを意識します。リストアップした Needs は自社が提供している顧客にとっての価値であり、今後の新用途・新市場探索のための視点と言えるからです。
次にSN変換表の右側(Market側)を作成します。生産財であれば業種・業界の区分であり、消費財であれば世代や家族構成の区分などになります。この場合、現市場を最も左側に置き、次に周辺市場、右側に新市場を置くと見やすく発想が促されやすいです。新市場については今後自社として狙いたい市場、ビジョンや方針で掲げられている市場をプロットします。Market の一覧化ができたら、Needsに書かれた内容からMarketとの交差するセルで、新商品、新用途を可能な限り発想していきます。セルの中には新商品名、新用途名を記入していきます。
SN変換発想では強み特性からキーワード(Needsの言葉)を導き、そのキーワードを軸に発想していくので具体的なアイデアが出やすくなります。この時点では質より量を優先して発想します。多くの発想を生み出すには、Needs、Market を多く準備することがポイントです。
セルが多ければ多いほど発想の機会が増えます。また、マトリクスの利点として、空白のセルがある場合、その前後左右のセルに書かれたアイデアを参考にして発想することができます。
1人の発想では限界があるので、チームやプロジェクトメンバーで行うことが望ましいです。複数人で実施した場合には100 以上のアイデアを出すことも可能になります。
次回は有望用途市場の評価・選定として、これまで発散してきたアイデアを評価、収束させていく進め方についてご説明します。
1つの Seeds で1つの Needs を実現しているケースもあれば、複数の Seeds で1つの Needs を実現しているケースもあります。SN変換表の左側で、どのSeedsがどのNeedsを実現しているかをマトリクス化し、該当するセルに印を付けていきます。表中央のNeeds については表現の大小はこだわらず、なるべく多くの該当事項を列記することを意識します。リストアップした Needs は自社が提供している顧客にとっての価値であり、今後の新用途・新市場探索のための視点と言えるからです。
次にSN変換表の右側(Market側)を作成します。生産財であれば業種・業界の区分であり、消費財であれば世代や家族構成の区分などになります。この場合、現市場を最も左側に置き、次に周辺市場、右側に新市場を置くと見やすく発想が促されやすいです。新市場については今後自社として狙いたい市場、ビジョンや方針で掲げられている市場をプロットします。Market の一覧化ができたら、Needsに書かれた内容からMarketとの交差するセルで、新商品、新用途を可能な限り発想していきます。セルの中には新商品名、新用途名を記入していきます。
SN変換発想では強み特性からキーワード(Needsの言葉)を導き、そのキーワードを軸に発想していくので具体的なアイデアが出やすくなります。この時点では質より量を優先して発想します。多くの発想を生み出すには、Needs、Market を多く準備することがポイントです。
セルが多ければ多いほど発想の機会が増えます。また、マトリクスの利点として、空白のセルがある場合、その前後左右のセルに書かれたアイデアを参考にして発想することができます。
1人の発想では限界があるので、チームやプロジェクトメンバーで行うことが望ましいです。複数人で実施した場合には100 以上のアイデアを出すことも可能になります。
次回は有望用途市場の評価・選定として、これまで発散してきたアイデアを評価、収束させていく進め方についてご説明します。
株式会社日本能率協会総合研究所のご支援メニューについて
(株)日本能率協会総合研究所では、新事業創出活動のご支援を行っております。ここまでのコラムでご紹介したようなテーマ創出の活動から事業企画のご支援も、お客様の課題に合わせてカスタマイズしてご支援いたします。さらに、市場動向の把握や、顧客ニーズの把握のための調査のご支援も可能です。詳しくはこちらのページをご覧ください。
◆新規事業開発支援 課題に応じてカスタマイズ可能な支援プログラム:研修から事業開発伴走支援まで
https://www.jmar.biz/business_development/
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