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2023.08.28 UP

技術・製品の新用途・新市場探索の進め方【第1回】






はじめに

企業は通常、既存の顧客、業界に対して商品・サービスを提供して収益を確保し、企業規模を拡大させていきます。しかし、既存の事業だけでは持続的な成長は難しく、やがて鈍化、成熟期を迎えます。
こうした状況の中で、企業が取るべき方策のひとつが新用途・新市場の開発です。既存の商品や技術を従来の顧客から新たな顧客や業界に展開していく新用途・新市場開発では、まずどのような顧客や業界をターゲットとするかが重要となります。

私ども日本能率協会総合研究所にも、自社の既存の商品や技術の新たな用途・市場がどこにあるか探索したい、というご相談が多く寄せられています。本コラムでは、技術・製品の新用途・新市場探索の代表的な手法について、連載形式でご紹介します。

図表 日本能率協会 が考える代表的な技術・製品の新用途・新市場探索の進め方(ビジネスプランニングまでの連載予定)


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1.商品・技術の特性把握

自社技術の新用途探索を行う場合、「技術的な強み」を探索視点の中心に設定したため新たな用途が見つけにくくなる、あるいは非常に局所的な用途しか見つけられない、というケースをよく見受けます。これは、技術の強みからそのまま用途を探そうとしているためです。
自社の商品・技術については、商品・技術が顧客にとって「どのようなメリットや価値を与えることができているか」を抽出した方がより広範に探索範囲が設定できます。最初にやるべきは、「技術的な強み」ではなく、顧客にとってのメリットや価値を商品特性として定義する、ということです。
その際の留意点として、商品特性の表現は技術に関する表現ではなく、利用する側の言葉にする、ということがあります。たとえば、「○○することができる」「○○に便利」といったように、その商品・技術の独自の良さやメリットを表現するよう心がけます。「技術的な強み」(技術的優位性)を商品特性と考えがちですが、「技術的な強み」はその商品を使う場面においては他商品と比べて優位性がない、あるいは微差である、ということが多くあります。そのため、「技術的な強み」を軸に新用途を探索しようとすると、自社独自の新市場創出は難しくなります。技術的優位性ではなく、顧客側からの視点で「どこに特徴があるのか、どの場面で利点があるのか」を明確にすることが新用途探索の可能性を拡げることになります。

図表 商品特性の抽出例(自動計測器)


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2.競合品代替
 
次に、自社の商品特性を活用して代替できそうなターゲットを設定します。前のステップで把握した商品特性などを踏まえ、何に置き換えることができるかを考え、置き換える対象、つまり代替ターゲットを定め、その用途市場を幅広く探索します。
表は炭素繊維と類似の特性を有する商品で、代替ターゲットを炭素繊維と設定した場合の探索例です。
・ 炭素繊維のメーカーをリストアップする
・ リストアップした各社の展開先の市場を抽出する
・ 市場別の具体的な用途を書き出す
という手順で一覧化します。

図表 代替ターゲットの用途市場探索例(炭素繊維)


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総合的に幅広い市場に展開しているメーカーもあれば、特定の市場に特化して集中的に展開しているメーカーがあること、またメーカーごとの製品や営業の特徴を反映した市場展開の動向を見て取ることができます。
こうして代替ターゲットで現在展開されている用途市場を俯瞰することにより、用途市場の主戦場や隙間市場が分かります。ビジネスチャンスとしては、先行企業があまり注力していない市場や、自社製品の特性から優位性を発揮できる市場を選択することになります。
自社が代替候補に対して圧倒的な優位性を持っている場合は、大きな市場に参入します。反対に優位性がない場合は、先行企業の展開が手薄な市場、例えば他用途の仕様でカバーしているような市場を見つけ出し、そうした市場に対して専用の仕様で参入することで市場内の地位をまず確立し、次に大きな市場に進出する、といった段階的な展開が有効になります。

次回は探索市場の設定②として、成長市場の先取り、SN変換によるアイデア発想について解説します。




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(株)日本能率協会総合研究所では、新事業創出活動のご支援を行っております。ここまでのコラムでご紹介したようなテーマ創出の活動から事業企画のご支援も、お客様の課題に合わせてカスタマイズしてご支援いたします。さらに、市場動向の把握や、顧客ニーズの把握のための調査のご支援も可能です。詳しくはこちらのページをご覧ください。

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