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2022.06.24 UP

科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点【第5回】

科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点



これまで科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点として、主な科学技術に関する官庁系のシンクタンク・研究所から「科学技術予測」「注目科学技術テーマ」など、ビジネスマンにも有益な情報を紹介してきました。

「科学技術力」は、中長期的な国力を左右する「ソフトパワーの源泉」であり、研究開発による「科学技術力」がそれぞれの国の経済政策・成長戦略の盛衰を左右する重要なファクターになっています。我が国をはじめ世界各国は、覇権をかけて「科学技術・イノベーション政策」の立案・推進に注力しています。とくに最近注目されている量子コンピュータやAI技術などの分野で他国の後塵を拝せば、国の安全保障に関わる重大な危機を招くことにもなり得るため「科学技術戦略」が国家戦略としてますます重要性を増しています。

科学技術に関する官庁系のシンクタンク・研究所も、海外の情報、特に米国、EU全般と英国、ドイツ、フランス、中国などの科学技術政策と最新の科学技術情報についての情報収集を積極的に行っています。これらの情報は国家戦略的な見地からはもとより、企業の研究開発者やビジネスマンにとっても大変有益な情報になるでしょう。

今後の技術開発において技術的な優劣だけでなく、どのような技術が「市場において主流」となるのか。世界の地域・国々で技術の規格化(ルールメイキング)について、どこでどのような検討がされているのか。国際機関や業界団体、研究機関、シンクタンクやNPO法人などの規格化動向に関する情報もビジネスに直結する注目動向と考えられます。

そこで今回は、海外の主要各国・地域における科学技術・イノベーション動向について「中長期的な視点(マクロ視点)」と「日々の最新情報の視点(ミクロ視点)」の観点からビジネスにおいて示唆を得るための科学技術情報を紹介します。





1.海外の科学技術政策動向(マクロ視点)

(1)JST研究開発戦略センター(CRDS)「研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略」(毎年)
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のシンクタンクであるCRDSは、主要各国の科学技術政策等を俯瞰できる『研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略』を毎年まとめています。研究開発戦略立案の基礎として把握しておくべき、科学技術イノベーション政策について、主要国(日本、米国、EU全般、英国、ドイツ、フランス、中国)の動向と世界の潮流について、行政組織/体制/ファンディング・システム/分野別の基本政策/研究基盤政策/研究開発投資戦略などを俯瞰的(マクロ視点)に最新動向をまとめています。

特に海外の科学技術政策動向を調査対象国別に「基本政策の体系」「重要政策文書(計画・法律等)」「科学技術イノベーション政策の基本方針」や「社会的課題に対する取り組み」など一覧にして各国の比較ができるようにエグゼクティブサマリーとしてまとめられており、忙しいビジネスマンにも有益な情報になると思われます。




出所:JST研究開発戦略センター(CRDS)、研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略 2022年版、2022年3月



また2010年代以後、気候変動、コロナパンデミック、大規模災害などの地球規模課題が急増しており、各国・地域の組織を越えた国際協調体制の構築が必須になっています。そこで国連や世界銀行、UNESCO、UNEP等国連関連機関、OECD、国際学術会議、研究助成機関、大学等の各セクターの分野、業種を越えた国際的なネットワークの拡大とパートナーシップの深化が進んでいます。2022年版の『研究開発の俯瞰報告書』では、各国の科学技術政策の動向にとどまらず、今後の日本の科学技術政策のイニシアティブを発揮するための基本的な情報として、国際的な科学技術政策立案にかかわる国際機関から民間の団体、研究機関など幅広い国際組織の位置づけや役割がまとめられています。地球規模での今後の科学政策・立案の方向性がどのような組織でどう検討・決定されているのかなど「マクロ的な見地」から押さえるにあたって示唆に富む内容が追加されています。


(2)文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学研究のベンチマーキング」(隔年)
NISTEPが2008年からほぼ隔年で調査をしている「科学研究のベンチマーキング」では、日本および主要各国の自然科学系の「論文」を分析対象として、論文数や重要論文として引用されるTop10の論文数など多角的なベンチマーク分析を行っています。
主要各国の論文を対象とした「科学研究のベンチマーキング」の結果は、各国が行っている科学技術開発戦略の成果の一端と見ることができます。最新年(2017-2019 年の平均)を見ると、日本の論文数は第 5 位で論文の量と、論文の質における日本の世界ランクは 2000 年代半ばから低下していることが課題となっています。一方、中国の論文数の伸び率などが大幅に増加していることが明らかになりました。


出所:文部科学省 科学技術・学術政策研究所、科学研究のベンチマーキング2021、
調査資料-312、2021年8月


2.海外の科学技術政策動向(ミクロ視点)
海外の主要各国の研究開発戦略ついてマクロ視点からおさえたうえで、海外の主要各国の科学技術動向日々の最新情報収集(ミクロ視点)するには、下記のサイトが有益です。

(1)JST研究開発戦略センター(CRDS)「デイリーウオッチャー」(毎日)
海外科学技術に関連する主要行政機関・研究機関の発表の要約記事を日本語で一日に5~8件提供している。最新の海外科学技術関連のトピックとしてビジネスマンにも有益な情報です。

 さらに、JST(科学技術振興機構)が提供するポータルサイト「Science Portal Asia Pacific」では、AESAN、中国、インド、韓国、豪州などの太平洋地域に特化したさまざまな科学技術関連ニュースを「アジア科学技術ニュース」として発信している。上記のCRDSの「デイリーウォッチャーニュース」とともに活用するとよいでしょう。

(2)TSC(NEDO)「NEDO海外技術情報」(2回/月)
NEDOの技術戦略研究センター(TSC)では、月2回注目の海外技術の注目論文を日本語で紹介しています。技術分野は「ナノテクノロジー・材料分野」「電子・情報通信分野」「ロボット・AI技術分野」「バイオテクノロジー分野」「蓄電池・エネルギーシステム分野」「新エネルギー分野」での海外研究機関・大学などが発表した注目の技術情報です。その技術論文の要約と出典が記載されています。

(3)独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)「ビジネス短信」(毎日)
JETROでは、世界主要国・地域の政治・経済動向、市場動向などのビジネス情報を毎日「ビジネス短信」として発信しています。科学技術に特化したものではありませんが、海外での新しい技術を使った新ビジネス情報など、企業の研究者やビジネスマンにもヒントなるような情報が散見されます。


<情報源一覧>
■JST研究開発戦略センター、「研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略」
https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2021-FR-02.html
■文部科学省 科学技術・学術政策研究所、「科学研究のベンチマーキング」
https://www.nistep.go.jp/research/science-and-technology-indicators-and-scientometrics/benchmark
■JST研究開発戦略センター、「デイリーウオッチャー」
https://crds.jst.go.jp/dw/
■科学技術振興機構、「Science Portal Asia Pacific」
https://spap.jst.go.jp/
■NEDO 技術戦略研究センター、「NEDO海外技術情報」
https://www.nedo.go.jp/library/tech_infor.html
■独立行政法人日本貿易振興機構、「ビジネス短信」
https://www.jetro.go.jp/biznews/


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