1.No.1訴求の魅力とリスク
近年、悪い意味で世の中を騒がせているNo.1表示ですが、今なお「No.1」は強いインパクトを残す、効果的なマーケティング手法の一つです。2020年に連載したコラムシリーズ「No.1マーケティングの考え方」を本コラムの配信に際してアップデートしましたが、根拠の乏しいNo.1表示が相次いで問題視され、行政処分や課徴金納付命令の対象となる事案が増えたことで、企業にとっては「魅力的だがリスクも大きい」という取り扱いの難しいマーケティング手法に変わってきています。
2.近年の動向:安易なNo.1への監視強化
2023年以降、消費者庁は「利用経験を問わないイメージ調査」に基づく「顧客満足度No.1」などの表示に対して、数多くの措置命令を出しています。ペット用品、機能性表示食品、太陽光発電、通信、注文住宅など、様々な業種が対象となり、その調査を請け負った調査会社の名前も公表されています。
さらに消費者庁は、2024年9月にNo.1表示に関する実態調査報告書を公表し、特に、①第三者の主観的評価に基づくNo.1表示、②医師や専門家の高評価率を用いた表示(「医師の●%が推奨」など)の二類型について、合理的な根拠に基づかない場合には不当表示として景品表示法上問題となる、との見解を示しています。
さらに消費者庁は、2024年9月にNo.1表示に関する実態調査報告書を公表し、特に、①第三者の主観的評価に基づくNo.1表示、②医師や専門家の高評価率を用いた表示(「医師の●%が推奨」など)の二類型について、合理的な根拠に基づかない場合には不当表示として景品表示法上問題となる、との見解を示しています。
3.課徴金の事例:高額なペナルティも
景品表示法違反となった場合に科される課徴金納付命令は、対象商品・サービスの売上額の3%です。No.1表示関連でも下記のような高額な課徴金納付命令が下される事例 が出てきており、ブランド・業績の両面で甚大なダメージを受けることになります。
◆ 発電機器の販売・施工事業者:約1億円
◆ オンライン家庭教師サービス:約6,000万円

◆ 発電機器の販売・施工事業者:約1億円
◆ オンライン家庭教師サービス:約6,000万円

4.だからこそ今、適切に掲げるNo.1の価値
ここで重要なのは、こうした監視強化は「No.1マーケティングの終焉」を意味しないことです。上述した消費者庁の調査においても、No.1表示等を見たことがある消費者のうち、約5割が購入の意思決定に「かなり影響する」または「やや影響する」と回答しており、「No.1」は依然として強い訴求力を保っていることがうかがえます。また、消費者庁は表示内容に見合わない、恣意的・安易な調査に基づくNo.1表示を問題視しているのであって、合理的根拠の伴った表示を問題視したり、制限しようという意図はみられません。
つまり、「根拠に乏しいNo.1が乱立していた時代」から「本当のNo.1だけを謳える時代」に転換してきており、だからこそ、適切な調査に基づく本当のNo.1は輝きを放ち、消費者の意識を捉え、競合との差別化に直結することになります。
つまり、「根拠に乏しいNo.1が乱立していた時代」から「本当のNo.1だけを謳える時代」に転換してきており、だからこそ、適切な調査に基づく本当のNo.1は輝きを放ち、消費者の意識を捉え、競合との差別化に直結することになります。
5.企業価値に繋がる、未来志向のNo.1を
「No.1」は、短期的に消費者の目を引き、売上増を狙う「派手なコピー」と捉えられがちです。しかし、これからの時代に必要なのは、誠実さや公平性を土台とした、信頼の証としての「No.1」です。そして、適切に裏付けられた「No.1」は、競合との差別化だけでなく、以下のように企業の長期的な価値にもつながります。
◆ 社内への波及
客観的に評価されたNo.1は、自社の社員にとっても誇りやモチベーションの源泉となり、
組織文化の強化に寄与します。
◆ ステークホルダーとの信頼構築
消費者だけでなく、取引先や投資家など外部の関係者に対しても、信頼のおける「No.1」
は、持続的な関係を築く基盤になります。
後編では、この時代にNo.1表示をより確かなものとするために留意すべき点をご紹介します。
◆ 社内への波及
客観的に評価されたNo.1は、自社の社員にとっても誇りやモチベーションの源泉となり、
組織文化の強化に寄与します。
◆ ステークホルダーとの信頼構築
消費者だけでなく、取引先や投資家など外部の関係者に対しても、信頼のおける「No.1」
は、持続的な関係を築く基盤になります。
後編では、この時代にNo.1表示をより確かなものとするために留意すべき点をご紹介します。
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