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2021.08.25 UP

科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点【第3回】
シンクタンクの注目分野・テーマ①

科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点



前回は2050年までの日本の科学技術の予測資料を紹介しました。
今回は、科学技術の情報収集・分析を担うシンクタンクがいまどのような「研究開発領域」に注目しているかを見ていきましょう。

国内外でいま注目されている「研究開発領域」といっても、その分野・領域は多岐にわたります。
現在、マスコミ等で取り上げられているAIやビックデータを使った分析技術や、自動車の自動運転技術など話題性のあるテーマに注目するだけでは、「木を見て森を見ず」に陥りかねません。

冷静に過去、現在、未来の研究開発動向を踏まえたうえで「研究開発領域」を見極めることが重要です。第1回で紹介した官庁系の科学技術に関する調査機関(シンクタンク)は、国の科学技術政策提言のために注目している研究開発領域を「マクロ(長期的)」と「ミクロ(短期的)」の視点からとらえた下記の調査資料を公開しており、参考になります。




今回は、このうち文部科学省所管の、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)と、JST研究開発戦略センター(CRDS)について取り上げていきます。

(1) 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「サイエンスマップ」
「サイエンスマップ」は、世界の有力な研究論文から国際的に注目を集めている研究領域を可視化した「研究開発領域」の地図です。マクロ的な視点から世界で注目を集めている研究領域をビジュアルで俯瞰できるのが特徴で、2018年で第9回目となります。
2018年の「サイエンスマップ」では、過去6年間の全世界の論文を分析した結果、世界全体の研究領域数が902と前回調査(2016年)より約18%も増加していることがわかりました。ただ、日本の研究領域は299から274と約8%減少しており、日本の研究開発力の停滞が懸念されるところです。世界的に研究領域が拡大している背景には、AIや量子・ナノテクなどの新技術領域の拡大による論文数の増加と、中国などの新プレーヤーの躍進があるとされています。

「サイエンスマップ」は研究領域の変化を時系列で分析できることも重要なポイントです。それにより研究領域の時系列の変化や今後目指すべき研究領域の方向性をマクロ的な視点から確認することができるのです。

「サイエンスマップ」は本コラム下段の<情報源一覧>に掲載されているURLより見ることができます。


(2) JST研究開発戦略センター(CRDS)「研究開発の俯瞰報告書」
「研究開発の俯瞰報告書」は、マクロ的な視点での社会や政策等の動向を踏まえた研究開発動向を、分野を超えた全体像としてとらえることを目的とした「統合俯瞰報告書」と、環境・エネルギー分野など4つの研究開発領域において、最新の研究開発動向をマクロ的な見地からまとめた「分野別俯瞰報告書」からなっています。対象としている4つの研究開発領域は下記の通りです。

・環境・エネルギー分野
・システム情報科学技術分野
・ナノテクノロジー・材料分野
・ライフサイエンス・臨床医学分野
 
俯瞰報告書は、多面的な情報収集をもとに分析した結果を、各分野A3用紙一枚で「俯瞰」できるようまとめていることが特徴です。この俯瞰資料から、注目されている最新の研究開発テーマだけに目を奪われることなく、マクロ的・世界的な視点から研究開発の動向と我が国の現状と課題、また研究開発領域における研究者自身の位置づけを確認できる内容となっています。



次回は、経済産業省所管の、NEDO技術戦略研究センター(TSC)と、特許庁について取り上げていきます。


<情報源一覧>
■(出典)文部科学省 科学技術・学術政策研究所, サイエンスマップ2018, NISTEP REPORT No.187
文部科学省 科学技術・学術政策研究所, サイエンスマップ2016, NISTEP REPORT No.178
https://www.nistep.go.jp/research/science-and-technology-indicators-and-scientometrics/sciencemap
■国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS),総合俯瞰報告書,分野別俯瞰報告書
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/index.html


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