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2021.01.21 UP

科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点
【第1回】有益な情報を提供している公的な科学技術組織

科学技術情報・動向からビジネス上の示唆を得るための視点



菅総理大臣は、先の国会の所信表明演説で「2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」と表明しました。東日本大震災により火力発電に頼らざるを得ない状況下で、再生可能エネルギーの普及が伸び悩んでいる日本にとってはかなり厳しい目標です。
ただ世界ではすでにEUが2020年初めに2050年までに温暖化ガス化排出ゼロを表明し、今後10年で官民合わせて少なくとも1兆ユーロ(約122兆円)の投資計画を発表しました。中国では11月の中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、2035年までにAIや半導体、航空宇宙などの最先端技術分野で野心的な中長期目標を掲げ、習主席が2060年までに温暖化ガス排出ゼロを目指すと国連総会で発表しました。中国は日本よりも積極的にEVや燃料電池車の普及を目指しています。米国もバイデン新大統領が、4年間で2兆ドル(約208兆円)を「グリーンリカバリー」に投資する政策プランを発表しています。

このように今、主要先進各国は環境・エネルギー分野をはじめ、人工知能(AI)や半導体、通信などの新しい技術開発にしのぎを削っています。これらはまさに技術覇権をめぐる競争であり、今後の新しい「科学技術力」がポストコロナの世界における中長期的な国の経済政策・成長戦略の上で重要な位置づけになっています。

ここで主要先進国の研究開発費総額の推移のグラフを紹介します。


出所:科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学技術指標2020」『概要』より


1981年から2018年までの主要国の研究開発費総額の推移をみると、2008年までは国別では日本は米国に次ぐ世界2位でしたが、その後2008年に中国に抜かれ、その後はずっと低迷を続けています。一方、中国は2008年には日本を追い抜き、2014年にはEUを抜き、2018年にはトップの米国に肉薄しています。中国の「科学技術力」が急成長している現実が、米中の技術覇権競争の要因で、研究開発による「科学技術力」がそれぞれの国の経済政策・成長戦略の盛衰を左右する重要なファクターになっているのです。
ところで、わが国では1995年に「科学技術基本法」が制定され、科学技術の発展を目指して5年毎の「科学技術基本計画」を中心に科学技術強化の政策を推進してきました。第2次安倍内閣では「世界で最もイノベーションに適した国を造る」ことを目指して、首相自らが議長を務める「総合科学技術・イノベーション会議」(CSTI)を設立し推進してきました。
政府による具体的な研究開発の推進組織としては、内閣府、文部科学省、経済産業省などの官庁とそれらの関連団体として、下記のような各種研究開発法人や大学等の研究機関があります。各政策官庁では科学技術基本計画策定のために、有識者による審議会を開催し、その結果をもとにそれぞれの分野での技術開発戦略を立案しているのです。



そこで注目したいのは、これらの国の科学技術政策を主導する内閣府、文部科学省、経済産業省または最近では外務省、環境省、防衛省などでも政策立案にとって「信頼性の高い科学技術情報」の必要性が高まっていることです。各府省では科学技術政策立案のための専門調査部門(シンクタンク)をそれぞれの傘下に設立しています。

以下に主要管轄官庁の科学技術政策のための専門調査部門(シンクタンク)を紹介します。



これらの技術情報専門調査機関は、本来の目的は各管轄省庁の政策立案のためのシンクタンクの位置づけですから、一般の企業やビジネスマン向けに情報発信を目的としているわけではありません。そのため、一般のビジネスマンにとってはなじみの薄い組織と思われます。
しかし、実はこの「科学技術情報」に特化したシンクタンクの発信する「情報」は、ビジネスマンにとっても有益な情報の宝庫なのです。各府省の政策立案者が、今後の国の成長戦略に重要な位置づけになる「科学技術戦略」を検討するときに活用する情報ですから、ビジネスマンにとっても有益な情報であることはまちがいありません。

そこで次回からこのコラムで、科学技術に関する官庁系のシンクタンクが発表している「ビジネスマンにも役立つ科学技術情報」を紹介していきます。


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