このたび、「技術情報協会:研究開発リーダー(2020年3月号)」に弊社 経営・マーケティング研究部 高齢者マーケティング研究室が寄稿した記事が掲載されましたのでご紹介させていただきます。
本コラムでは記事の前半をご覧頂くことができます。
(記事後半はこちらから)
貴社のマーケティング活動のご参考になりましたら幸いです。
1.はじめに:加速する「高齢者シフト」
日本は超高齢社会と表現されるようになって久しく、2020年現在、65歳以上の高齢者は3582万9千人(出所:総務省統計局)、全人口に占める割合は28.5パーセントに達している。まもなく3人に1人は高齢者、という社会が到来するが、この高齢化率は今後さらに高まり、国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上高齢者人口は2065年時点では38.4パーセントに達すると推計される。
こうした人口動態的変化は、民間企業のマーケティングに多大な影響を与える。市場全体を俯瞰したとき、ターゲットボリュームが最も大きいのは高齢者のセグメントであり、その存在感は今後さらに高まっていく。このことを前提に、自社のマーケティング戦略を見直し、再構築する企業が増えている。こうした「高齢者シフト」の成否が今後の企業成長を大きく左右する局面を迎えている。
高齢者シフトに関する民間企業の姿勢を確認した調査として、弊社、日本能率協会総合研究所が2019年に実施した調査を紹介したい。この調査では、民間企業の経営企画・マーケティング担当者400名を対象に、自社の高齢者市場攻略に向けた取り組み状況について調査した(調査名:高齢者市場攻略に向けた取り組み状況実態調査、2019年6月実施)。その結果、下記の点が明らかになった。
・高齢者人口の増大が自社ビジネスに「強く影響する」または「影響する」と答えた方は全体の75.1%。
・高齢者人口増大により自社ビジネスが「何らかの影響を受ける」と答えた方に、高齢者に対するマーケティング活動の必要性をたずねたところ、66%が必要と回答。
・高齢者を「最重要ターゲット」と捉えている回答者は11.5%、「重要ターゲット」と捉えている回答者は46.2%。合算すると57.7%が重要視。
これらの結果は、多くの企業が生き残りをかけて高齢者市場と向き合おうとする姿勢を示唆している。
2.高齢者マーケティングの難しさ
このように高齢者シフトが熱を帯びる一方で、高齢者マーケティングの難しさに直面する企業も増えている。従来より、弊社のクライアントのマーケティング担当者から「高齢者マーケティングは難しい」という声を頻繁に聞いていたが、先述した弊社自主調査ではそのことを定量的に確認した。すべての回答者400名のうち、「高齢者マーケティングが必要」と認識している251名(全体のうち62.8%)に対して、「高齢者をターゲットとしたマーケティングにおいて感じる課題・困難」を質問した(図1)。その結果、92.4%の回答者が何らかの課題・困難を挙げた。具体的内容を確認すると、身体状況や健康状況、購買行動、普段の生活行動などの「事実の確認」(実態把握)に関する項目が上位を占めた。高齢者は重要なターゲットでありながら、基本的なファクトが不足しており、それがマーケティング戦略立案を困難にしているという実態が浮き彫りとなった。
なぜ実態把握が難しいのか。通常、消費者・生活者の実態を把握する場合、マーケティングリサーチを実施するのがセオリーである。昨今ではインターネットモニターを活用したWEB調査が一般的だが、高齢者の場合、この方法では限界がある。そもそもインターネットモニターに登録している高齢者の絶対数が少ない(後期高齢者は特に少ない)。また、登録している高齢者はネット利用率100%でデジタルリテラシーが高い傾向にあり、データの代表性(高齢者全体を表現しているデータかどうか)に懸念がある。こうした要因により、インターネット調査では高齢者全体の正確な実態に迫ることが難しい。
弊社は、適切な高齢者調査を実現するため、60歳から90歳までの高齢者を「ネットではなくオフラインで」リサーチできるモニターを保有している。主に民間企業のクライアントから委託を受け、郵送調査やインタビュー調査、会場調査等を実施し、マーケティング課題解決に寄与する有用なデータを提供してきた。また、弊社自主企画による高齢者関連レポートを発表し、定期的に情報発信を行ってきた。こうした活動により、弊社は高齢者調査、高齢者マーケティングに関するオリジナルな知見を蓄積している。次項以降では、こうした知見をもとに、主にBto C企業のマーケティング担当者を読者と想定して、高齢者マーケティング成功に向けたポイントを紹介していきたい。
なぜ実態把握が難しいのか。通常、消費者・生活者の実態を把握する場合、マーケティングリサーチを実施するのがセオリーである。昨今ではインターネットモニターを活用したWEB調査が一般的だが、高齢者の場合、この方法では限界がある。そもそもインターネットモニターに登録している高齢者の絶対数が少ない(後期高齢者は特に少ない)。また、登録している高齢者はネット利用率100%でデジタルリテラシーが高い傾向にあり、データの代表性(高齢者全体を表現しているデータかどうか)に懸念がある。こうした要因により、インターネット調査では高齢者全体の正確な実態に迫ることが難しい。
弊社は、適切な高齢者調査を実現するため、60歳から90歳までの高齢者を「ネットではなくオフラインで」リサーチできるモニターを保有している。主に民間企業のクライアントから委託を受け、郵送調査やインタビュー調査、会場調査等を実施し、マーケティング課題解決に寄与する有用なデータを提供してきた。また、弊社自主企画による高齢者関連レポートを発表し、定期的に情報発信を行ってきた。こうした活動により、弊社は高齢者調査、高齢者マーケティングに関するオリジナルな知見を蓄積している。次項以降では、こうした知見をもとに、主にBto C企業のマーケティング担当者を読者と想定して、高齢者マーケティング成功に向けたポイントを紹介していきたい。