注目を集める「シニア市場」(No.4)

2016年9月20日

前回(第三回)では、消費金額からみた「アクティブシニア」とは、「70代」だったということを明らかにし、マーケティングもリサーチも「70代」の理解を深める必要性があることを論じた。

今回は、「シニア」層を対象としたリサーチの課題と対応の方向性について論じることとする。

-resize2resize2シニア市場No4_2.jpg

1. 日本のマーケティングリサーチにおける調査手法のトレンド・日本の特殊性

我が国においてマーケティングリサーチ分野で唯一の業界団体である、一般社団法人日本マーケティングリサーチ協会では、正会員社を対象とした経営実態調査を毎年公表している。

20167月に公表された経営実態調査では、2015年度のマーケティングリサーチの市場規模は1,946億円、この内アドホック調査(特定の目的の為の企画調査)の市場規模が1,208億円と推計されている。

この内、インターネット調査の市場規模は607億円で、これにパネル調査においてもインターネットが利用されている現状を鑑みれば、我が国マーケティングリサーチ市場においてインターネット調査(会社は金額から言えば三分の一を占める大きな存在となっている。

その中で、アドホック調査(特定の目的の為の企画調査)売上を100%とした場合の手法別の構成比では、言うまでもなく「インターネット調査の隆盛」と「訪問調査の衰退」を物語っている。

日本では、言わば人気者の様相を呈しているインターネット調査ではあるが、このトレンドは世界的にみたらどうであろうか?

実査方法・手法は、歴史的に各国の社会環境や国民性に左右されて確立してきており、インターネットが実査方法にどのように影響を与えているかは大変興味深いものがある。(例えば、米国は銃砲の所持が認められている為、調査員の安全に配慮する必要から訪問調査は行われていない。)

 

 世界的なリサーチ団体であるESOMAREuropean Society for Opinion and Marketing Research)が、各国のリサーチ業界団体の結果を取りまとめ、下図のデータを発表している。

これを見ると、やはり、日本のインターネット調査の人気は群を抜いて高いと言えそうだ。日本以外の主要国では、オーストラリアを除けば概ね20%台にある。

2. 「シニア」のインターネット利用とアンケート回答の状況

前項で、日本でのマーケティングリサーチの調査手法としてのインターネットの高利用の状況を論じたわけだが、「シニア世代」でもそうだと言えるのだろうか?と、素朴な疑問を持たれる方も多々いるのではないだろうか。

 総務省が毎年実施する「通信利用動向調査」結果によれば、日本全体のインターネット利用率(個人ベース)は83%に達している。

その中で、年代別に比較すると、12歳以下と「シニア世代」が含まれる60歳以上では、全体平均値には満たない。この利用率の低い層の直近年次での利用率の高まりは明らかではあるが、前回論じた「シニア世代」、消費金額における「アクティブシニア」とも言える70代での利用率はようやく50%を超えたところにある。

ところで、「通信利用動向調査」は更に興味深いデータを提供してくれている。

前項で示した、マーケティングリサーチにおけるインターネット利用率の数値は、調査対象が事業者で供給ベースのようなものであったのに対し、総務省データは、調査対象が消費者で需要ベースでのインターネットによるアンケート回答の利用率と捉えることが出来なくもない。

それによると、インターネットの利用用途として、アンケート回答はクイズ回答や懸賞応募と一括りになってしまっているが、最も低い60代以上で10%、その他の年代では25%程度である。もし、アンケート回答に限ったとしたならば、この数値はより低いものになる可能性が高い。

 こうして見てくると、日本のマーケティングリサーチでは、ディファクトスタンダードと言っても過言ではない調査手法としてのインターネット調査は、消費者ベースでみると、多少の年代間格差はあるものの、全体では25%程度、そして「シニア世代」に限ると10%程度しか利用(回答)されていない現実が浮き彫りとなったのでは無いだろうか。

3. 「シニア」世代に相応しいマーケティングリサーチ手法とは?

 さて、これまで見てきたように、インターネット調査の人気ぶりには、当然ながらそれなりに理由がある訳であるが、第一に、調査・調査結果の価値の要諦である「サンプル数」と「質問数」という点において経済合理性の高さにある。そして第二に、我が国の厳しい個人情報保護法の下で、調査対象者(協力者)を確保する上で、インターネット調査会社が整備してきた「登録アンケートモニター」無しに民間企業等の調査主体が実査を行うのは、費用の面を合わせて事実上不可能なことにある。

 前項で見た、総務省の通信利用動向調査は、法律で定められた調査であり、調査対象母集団名簿(サンプリングフレーム)は住民基本台帳が使用されている。調査票は郵送発送され、回答票の返送は「郵送」若しくは「eメール」で実施されている。

 このことは、現時点において重要な調査の方法論として、サンプリングフレームは住民基本台帳、回収方法はマルチモードが望ましいことを示していると言える。

2015年の国勢調査では、更に一歩進んでWEB画面での回答(インターネット調査と同じ)も可能となっている。

 民間では、行政が行っているような調査のやり方を行うことは、物理的制約から現時点では不可能と断言出来る。しかし、こうした行政の取組みから、民間における特に「シニア世代」に対する調査における課題として次のものが挙げることが出来る。

1) 「シニア世代」のインターネット利用者は50%程度しかいない

2) インターネット調査では70代以上にはインターネット利用者の10%程度にしかリーチ出来ない

3) インターネット調査(回答者はモニター登録者)に固定化することで対象者属性の固定化が避けられず調査結果にも偏りが生じる

従来、調査実施の際の基本的な考え方・方針として、一つの調査を複数の調査法を使うことは避けてきた。それは、「20代はインターネット」「60代は郵送自記入」で実施した場合、分析段階で、20代と60代に格差があった場合、それは「年代格差」か「手法格差」か、と言った無用な議論が起こらないようにする為であった。

今でもこのことを否定するつもりは無いが、今回のようなデータを見てくると、「シニア世代」に対象を絞った場合には、やはりインターネット調査だけで「シニア世代」が理解できたか!?と言われると返事に窮するのは私だけではないのではないだろうか。

「シニア世代」を理解する、あるいは新製品の評価を得る目的でマーケティングリサーチを実施することを前提にすると、幅広に「シニア世代」にリーチが可能となる調査手法の選択が重要になる。

 弊社では、インターネット調査黎明期に人気のあった「郵送・FAX調査」をオフラインの「リサーチモニター」を利用して今でも提供し続けているが、シンクタンクをはじめ、民間企業や学術研究機関などから「インターネット非利用の高齢者を対象とした調査」や「子供を対象とした調査」、「同一世帯の親子調査」などの需要が後を絶たない。

弊社の「リサーチモニター」は、登録にあたっては世帯登録とし、詳細な属性情報を登録してもらっている。モニターの中には、インターネットを活発に利用している「シニア世代」も含まれており、住民基本台帳から調査対象者を抽出した場合と変わりないインターネット利用者が出現し、調査対象者母集団名簿(サンプリングフレーム)を得る事ができる。

「シニア世代」を対象とするマーケティングリサーチを計画される場合には、ご検討頂ければ幸いである。

日本能率協会総合研究所のモニターリサーチシステム「シニアモニター」はこちらをご覧ください。

 今回は、「シニア」層を対象としたリサーチの課題について論じたが、「シニア世代」の理解を深める為には調査手法の選択が重要であることがご理解いただけたのではないだろうか。

さて、次回コラムは「シニア世代」の5回目を迎えるが、「シニア世代のカスタマージャーニー」を論じることとする。

コラム一覧